小説にみる本郷界隈(150)20・04・20

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根津神社・楼門

 権現坂(新坂、S坂)から塀越しに楼門が見える。 「根津権現社は千何百年も昔、日本武尊の東征の際に、勝利を祈願して千駄木に創建されたなどという歴史を、江戸の人々はほとんど知っていない。せいぜいが、太田道灌が社殿を再建したあたりからで、大半は五代将軍綱吉がその後継者と決めた甲府宰相綱豊の産土神(うぶすながみ)だというので、社領五百石と共に華麗な社殿を寄進したのが根津権現社のはじまりだと思っている」 と平岩弓枝(ひらいわ ゆみえ)の時代小説 『はやぶさ新八御用帳』 に書かれている。

 東京の人々はそれもほとんど知っていない。根津神社と言ったら、まず躑躅(つつじ)を連想する。しかし、肝心の躑躅はまだ二分咲きだニャ~。


1900年前 日本武尊が創建
  550年前 太田道灌が社殿再建
  300年前 5代将軍綱吉が社殿寄進

日本武尊(やまとたけるのみこと) : 古事記によると、第12代・景行(けいこう)天皇の皇子で、西の熊襲(くまそ)討伐や東征(とうせい)により、朝廷の権力拡大を完成させた。

甲府宰相綱豊(こうふさいしょう つなとよ) : 甲府藩・2代藩主の徳川綱豊のこと(一般的には甲府宰相というと綱豊のことでなく、綱豊の父・綱重を指すが)。綱豊は後に家宣(いえのぶ)と改名した。
第5代将軍・綱吉には世嗣(せいし、よつぎ)がいなかったため、甥(兄・綱重の子)の家宣が後を継いで第6代将軍となる。

産土神(うぶすながみ) : 生まれた土地を守護する神。

『はやぶさ新八御用帳』 (はやぶさしんぱち ごようちょう): 江戸・南町奉行所の内与力(奉行秘書官)の隼新八郎が上司の奉行・根岸肥前守と共に事件の探索をおこなうという特別捜査官もの。シリーズ8 『春怨根津権現』(しゅんえん ねづごんげん)は平成9年(1997)刊行。

根津神社については、平成19年4月22日の チビのお出かけ108 と、平成18年5月1日の チビのお出かけ46 も見てね。

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根津神社・徳川家宣胞衣塚(えなづか)

 十数個の割り石が雑然と積み重ねられている。これは第6代将軍・徳川家宣の胞衣(えな)を埋めた所と伝えられている。
 
胞衣は産衣(うぶぎ)のことかと思ったらそうではなく、胎児を包んだ膜と胎盤のことだと案内板で知った。


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東大本郷キャンパス・三四郎池

 小説 『三四郎』 に 「・・・三四郎は池のそばに来てしゃがんだ。非常に静かである。電車の音もしない。 三四郎がじっとして池の面を見つめていると、大きな木が幾本となく水の底に映って、そのまた底に青い空が見える」
とある。この池の正式名称は「育徳園心字池」(いくとくえん しんじいけ)と言うが夏目漱石(なつめ そうせき)の小説以来、三四郎池の名で親しまれている。

 ボクも池の傍に来てしゃがんだ。増水していて踏み石を渡れない。一昨日の大雨の影響なのかニャ~。


『三四郎』 : 大学入学のため九州から出てきた小川三四郎が、都会のさまざまな人との交流を経て成長する過程を描く。作中、この池で美禰子と出会う。明治41年(1908)新聞に連載。

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上野公園・不忍池
 
 忍ぶ忍ばず無縁坂~ を下り不忍池(しのばずのいけ)に出る。八重桜が満開だ~!
 森鴎外(もり おうがい)の小説 『 雁 』 にも不忍池が登場する。池の雁に石を投げたら当って死んでしまった。それを食べてしまおうという件(くだり)がある。
 『・・・岡田は躊躇(ちゅうちょ)した。 「・・・石を投げるのは可愛そうだ」 石原は笑った 「・・・君が投げんと云うなら、僕が投げる」 岡田は不精らしく石を拾った。 「そんなら僕が逃がして遣る」 つぶて(礫、小石のこと)はひゅうと云う微かな響をさせて飛んだ。僕がその行方をじっと見つめていると、一羽の雁が頸(くび、首のこと)をぐたりと垂れた。・・・ 「中った」 と石原が云った。・・・「・・・雁は御馳走するから」 と石原は云った。』
 そこの二人!!そんなことしたら今だったら動物愛護団体から噛み付かれるニャ~。
 それにしても、明治の頃は雁がいたんだニャ~。最近はユリカモメ(百合鴎)がやけに多い。


 そういえば、根津神社にあった「文豪憩いの石」、そこに夏目漱石や森鴎外らが腰掛けて小説の構想を練ったのかニャ~。そうだ、文豪憩いの石に座れば、ボクにも小説が書けるかも知れない。題名は『ボクはお出かけ猫』。でも、題名を決めただけで終わった。


『雁』 (がん) : 高利貸しの妾・お玉が医学生の岡田青年に慕情を抱くが、思いを伝えることが出来ないという、儚い心理描写を描く。無縁坂を歩く岡田青年と家に居るお玉の視線が合った。明治44~46年(1911~1913)新聞に連載。

♪ 無縁坂 作詞 / 作曲 さだまさし 昭和50年 <繰り返しの部分>
忍ぶ忍ばず無縁坂 噛み締めるような
細やか(ささやか)な僕の 母の人生

上野駅前(西郷さん下)の聚楽台(じゅらくだい、レストラン)が明日で閉店するという。店を構えて半世紀、建物の老朽化で上野の顔としての役目を終える。時代の流れを感じる。

・ 根津神社 平岩弓枝(1932~)現79歳 『はやぶさ新八御用帳』
・ 三四郎池 夏目漱石(1867~1916)享年49 『三四郎』
・ 不 忍 池  森 鷗 外 (1862~1922)享年60 『雁』

(チビの日記!!チビのお出かけ150) 

 
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by chibi-papa | 2008-04-20 16:01 | チビのお出かけ  

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